免税事業者には消費税支払いません!!

最近、「インボイスの事業者登録をしない場合、取引先への代金は消費税抜きで支払います」等という文書がお客様に送付されている。なかには「消費税を支払わない免税事業者に代わり、こちらが消費税を負担することになるので当たり前ですよね」と言ったニュアンスの記載があるケースも見受けられる。

 

仮に横浜税理士法人が年間売上6,600,000円(うち消費税600,000円)の免税事業者であった場合、令和5年10月より、適格請求書発行事業者(消費税を支払う人)の登録をしなかったらどうなるのか考えてみた。

ある大口顧客A社から月額顧問料を500,000円+消費税50,000円で年間6,600,000円を頂戴していたとしよう。(1社でそんなに頂いているお客様はありませんが💦)顧問料はこの1社分のみ。
もしも適格請求書発行事業者である顧客A社から、冒頭のような文書を受取り、月額顧問料500,000円しか支払いして頂けなかった場合、横浜税理士法人の年間売上は6,000,000円と600,000円ダウンしてしまう。これは大幅な売上ダウンであり、もし自身が個人事業者であれば、生活費にも影響を与えるので更にダメージは大きくなる。

では、顧客A社ではどうなるのでしょうか?インボイス制度開始から一定期間は、適格請求書発行事業者以外の者(つまり免税事業者)からの課税仕入れ(A社から見ると横浜税理士法人へ支払う顧問料)であっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられている。(消費税改正法附則52、53)。

経過措置を適用できる期間は合計6年間。当初の3年間(令和5年10月1日から令和8年9月30日まで)は仕入税額相当額の80%、それ以降さらに3年間(令和8年10月1日から令和11年9月30日まで)は50%とされる。
顧客A社は横浜税理士法人に支払う月額500,000円の顧問料に10/110(消費税率・地方消費税含)を乗じた消費税相当額45,454円に80%を乗じた36,363円(TKC課税区分基準書的には52・62・72番)を他の預かった消費税から控除できることになる。(消費税法付則22①23①)

 

、、、んんっ?なんだこれは!

月額顧問料500,000円としたにも関わらず、A社では払った顧問料は463,637円・仮払消費税相当36,363円となっているではないか。いつの間にか値引きになっている・・・?

公正取引委員会が公開している「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」において、取引上優越した地位にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施後の免税事業者との取引において、仕入税額控除ができないことを理由に、免税事業者に対して取引価格の引下げを要請し、取引価格の再交渉において、仕入税額控除が制限される分については、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではないとしている。

しかし、この経過措置で80%がみなして控除できてしまうことは結果的に、仕入側の事業者(買手)の都合の良い制度となり、このような文書は独占禁止法上問題となるので可能性が出てくるのではと考えてしまう。

大手企業の中には公正取引委員会からの勧告を受けないよう、免税事業者への支払いについて取引価格の協議はせず、従前同様請求された金額をそのまま支払う企業も数多くあるようである。「免税事業者には消費税支払いません!!」はもう一度再考願いたいものである。

 

横浜税理士法人
代表社員 服部 久男

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