「連結納税制度」から「グループ通算制度」へ

 連結納税制度は平成14年に創設され、親法人と100%子法人とが企業グループを一つの会社のように捉え法人税を計算する制度である。

 同制度創設初年度である平成15年より、ある企業とのご縁を頂き、弊税理士法人でも親会社と子会社の連結納税の申告に関わらせて頂いた。当時は法人税法規集と、唯一デロイトトーマツ税理士法人が刊行していた「詳解 連結納税Q&A」しか実務の解説書がなく、パートナー税理士と条文の解釈や税額計算で四苦八苦したことを思い出す。その「詳解 連結納税Q&A」は今日までに9回も版を重ね、当税理士法人では現在、親会社・子会社合わせ20社超の連結納税の申告業務に携わらせて頂いている。あっという間に年月が過ぎていたが、凄い変化である。

 通常の法人税の申告業務に精通することは当然のこと、それに加えて同税制度固有の処理を理解する事は担当者泣かせではあるが、約20年間この制度に関わった事で着実に税理士法人としてのスキルが向上したことは、とても有難い事だ。

 現在、同制度の導入企業は上場企業では2割程度であるが、令和4年4月1日より「グループ通算制度」へと移行される。企業グループ内の利益と損失を相殺するという枠組みは維持しつつ、企業が制度導入を敬遠する要因の一つであった、「法人の税額計算誤りや税務調査での増差があった場合、グループ全体に影響を与えてしまう」という点について、誤りがあった企業だけの再計算・申告で完結するようになり、事務負担が減少することで、制度が導入しやすくなると期待されている。

 連結納税制度においては、親法人がグループを代表して連結法人税を申告していたのが、新制度であるグループ通算制度においては、グループ内の各企業が個別に申告する方式に変わり、この個別申告方式の採用により親法人・子法人が個々にスムーズに事務作業を担え、税務が複雑化するなか、子法人への税務の意識付けも見込めるようになる。

 また、従前の連結納税制度を採用している法人は自動的にグループ通算制度に移行されるが、移行前に届け出れば単体納税に戻ることもできる。従前の連結納税制度は一度選択適用したら、原則的には(永遠に)単体納税には戻せないとされていた。しかし今回の新制度移行に伴い、単体納税に戻る唯一の機会を与えられるのだ。

 しかし多くの連結納税採用法人では、引き続き損益通算のメリット等を活用するため、新制度に移行する見込みのようだ。特に新制度でも企業間の損益を通算できるという大枠が維持されたことは大きい。グループ内のある法人で欠損が生じた場合、他の法人で生じた税務上の利益(所得)とこの欠損を相殺させて税額を計算するため、グループ全体としての税負担の軽減効果が見込めるという点が最大のメリットだ。一方、グループ通算制度では「投資簿価修正」と呼ばれる仕組みの変更等、デメリットが生じる法人もあり、移行にあたっては十分な検討が必要ではある。

 最近では、大手デパート高島屋が、グループ全体でのキャッシュ・フロー改善と繰越欠損金の利用を図るため駆け込みで連結納税の適用を申請し、グループ通算制度への移行に備えたとの発表もあった。新型コロナウイルス感染症拡大により打撃を受けた法人の財務内容を改善すべく、法律にのっとった適切な税負担軽減ができる同制度の活用は、最良の選択肢であると思う。

横浜税理士法人
代表社員 服部 久男

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