新型コロナを理由に従業員のプライベートはどこまで制限可能?
状況は改善しつつあるものの
ワクチンの接種開始、新たな治療薬の国内承認など、新型コロナウイルス感染症を取り巻く状況は改善しつつあります。しかし、東京などの大都市圏では、入院者がなかなか減らず、医療が逼迫しているなど、まだまだ油断ができないのも実情でしょう。
さて、新型コロナウイルス感染症が流行したことに伴い
- 会社単位での懇親会その他のイベントを自粛する
- テレワークを取り入れる
- 対面で会議を行う場合は、人員・時間の制限をかける
など、従業員の安全を確保するために様々な手段を講じてきた事業主は多いでしょう。労働契約法では、事業主は従業員が安全に働けるよう、必要な対策を講じることが求められるからです(安全配慮義務)。
一方、従業員の事業主の指揮命令下にない時間=プライベートの過ごし方について、事業主がどこまで制限をかけられるかは、慎重な判断が求められます。
簡単にまとめると
- 制限をかけることが、職務を遂行する上で必須であるか
- 制限をかけることが、感染者の拡大防止という目的に照らし行きすぎていないか
が争点となるでしょう。
むやみやたらな制限はNGです
たとえば
- 医師・看護師・介護福祉士などの医療従事者
- 警察官・自衛官・海上保安官・消防士などの保安系公務員
は、仮に感染した場合、一定期間を経ないと職務に復帰できません。
そのため「配属されている職場のすべての職員がワクチン接種を完了するまでは、私的な会食を禁ずる」など、強い制限を加えることに一定の妥当性はあるでしょう。
しかし、システムエンジニアや事務職など「理論・技術上在宅勤務が可能である」職種にまで、同様の制限を加えることは、妥当でない可能性が高いです。
また、私的な会食に出席したからと言って、必ず新型コロナウイルスに感染するとは限りません。
そうなると、会社側からできるのは
- 感染症対策がずさんな場所での会食は避けること
- 緊急事態宣言、まん延防止等措置が発令されている場合は、国・自治体のガイドラインに沿って運営している店を選ぶこと
など、なるべく感染リスクを低くする形での対応を求めることにとどまります。
いずれにしても、従業員=労働者には、憲法で認められた私生活の自由があります。感染リスクを恐れるのはわかりますが、それに乗じて過度に私生活を制限するのはいかなる理由があろうと許されません。
ましてや「新型コロナウイルスに感染したら解雇・減給」など、感染を理由にした従業
員への懲罰を行うのは、新型インフルエンザ等対策特別措置法により禁じられています。万が一、会社側がこのような扱いをした場合、解雇・減給は無効となる上に、従業員から損害賠償を求められる可能性も高いので注意してください。
このような背景を考えると、むやみに制限をするのではなく「職場の安全と従業員の私生活の自由を両立する」ことを目的に、社内での対応を決める方が現実的でしょう。
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