低山登山 4
(前回までのお話はこちら:低山登山3)
他の登山客が通るかもしれない道をうろちょろと行ったり来たりするものの、足に疲労がたまりだしてきており、うろちょろの両端、きつい下り坂の先までは範囲を広げて気楽に歩けなくなってきました。予備知識がなくどちらに進もうというような太陽の位置から想定するような方向感覚にも自信がなくなってきました。早い時間から登り始めたのでまだお昼までかなり時間もあり暗くなる心配もありませんが、他の登山客はまったく通りかかりません。
焦りが増しまだ体の動くうちに打開策を求めて自分の現在地や山の下り方携帯電話機のアンテナがつながる場所や、木に曾孫熊山や鹿山などとプレートが掲げてあるところにとどまり、ネット検索をこころみますが電波が弱く表示には時間がかかります。
ネット検索で表示された遭難しかけた先達のページにはSNSで後輩に助けを求め熊山から大文字に戻るところが一番しんどかったなどと自分の状況に近いような記事がありました。登山仲間や土地に明るい友人などのいない私には打つ手がありません。
景色を眺め飲み干した炭酸水以外には、朝から持ち歩いていた残量の心もとないお茶があり、下山計画で一番の相棒となりましたが先の見えない状況で飲み干すわけにはいきません。
どうしたものかと困り果てていると、ひょいっと青いスポーツウェアのおじさまが現れました。慌ててお声掛けしご挨拶と迷っていることをお伝えし後ろからついて言ってよいかとお願いしました。おじさまももう下山しようとしていたところだからと快諾してくださり、ひとりだったら道なき斜面を下るなど登山道をショートカットして帰ろうと思っていたけど疲れ切っている君には難しいだろうから大文字山山頂まで連れて行ってあげようとおっしゃいました。
感謝を述べおじさまに付いていくことに集中しました。おじさまは道すがら私のことを気にかけ振り返り声掛けしながら移動速度を加減してくれているのがわかります。本当に感謝です。
登山道はあまり通らず山の斜面を細い木につかまりつかまり横移動します。気を抜くと転がり落ちそうです。一見ハードなコースですが正規の登山道を通ると私が登り切れないだろうとのご配慮です。正規の登山道は遭難しかけた先達の通ったコースのようです。
これ以上ご迷惑をおかけしないように必死に山の斜面を横移動し食らいついていきます。残りわずかとなった相棒温存のためタオル地ハンカチの汗を吸い込んでみたりして口の渇きを潤します。おじさまの後ろを付いていくと見知った風景がひろがります、この先を行ったら大文字だからと、もう迷わないだろうというところまで案内していただいてしまいました。
感謝の握手とご挨拶ののちおじさまはひょいっとお帰りになりました。おじさまへの大きな感謝を胸に山をなめてはいけないと猛省し山を下りました。
登山口の自販機ではポカリスエット3本と麦茶1本を一気に飲み干し13時ごろバス停から帰路につきました。
翌日おじさまに伺った最寄り駅と駅前の有名下着メーカー横にお住まいとのお話からご挨拶をとお宅を探してみたのですが伺ったお名前の表札を見つけることはできませんでした。おじさま本当にありがとうございました。 後日有名な登山アプリを取得したわたしはもう迷うことがなくなりました。準備は大事ですね。おじさまに助けられたおじさんのひと夏の話でした。
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