《ぼやき》インボイス制度開始後、免税事業者は請求書に「消費税額」の記載をしていいのか?

インボイス制度開始まで残り3か月程度まで迫ってきている状況ではありますが、未だに実務上の明確な見解・解説が出ていない事項として「免税事業者の消費税請求問題」があるかと思います。
免税事業者の顧問先に、「うちは免税事業者なんだけど、10月以降は請求書・領収書に“消費税”って書いてもいいの?」とよく聞かれます。
どのインボイスセミナーでも、研修でも、書籍でも、明確に解説しているものってないんですよね。(私調べ)個人的にはインボイス制度に関する回答において一番難しい質問だなとも感じています。


■考察

ではインボイス制度開始後、免税事業者は従来通り消費税額を記載した請求書を発行することが出来るのでしょうか?

これに関して、主だった税務情報誌には以下のような解説がありました。

『インボイス方式の適用後の取引に係る免税事業者の取引金額に係る請求について消費税額の請求をすることを禁止する規定はありませんが、「消費税額」ではなく「消費税相当額」として請求することが良いものと考えます。』(税務通信3700号 2022年4月18日)

そうなんです、現在の消費税法等において、免税事業者の売上に関して「消費税額」の表示をすることに関して禁止する規定はありません。免税事業者は受取る消費税を国に納付しないので、「消費税額」として請求するのではなく、「消費税相当額」として請求すべきというのがこの解説の結論です。

あくまでも個人的な見解ですが「消費税相当額」という表現にしたところで消費税率は皆一律に10%又は8%軽減であるのですから、「消費税額」として請求しても何ら実態は変わりなく、実務上も圧倒的多数でこれまで通りの「消費税額」表記で進んでいくのだろうなと予想しています。

売上先が最終消費者である場合、仮に免税事業者であるからと言ってレシートに「消費税“相当額”」や「消費税なし」なんて書こうものなら、それこそ混乱しますよね。例えばカフェでコーヒー買って「消費税なし」って書いてあったら、「消費税のかからないコーヒー」ということでたちまち話題になると思いますよ。

語弊があるかもしれませんが、インボイス制度はあくまでも仕入税額控除や、消費税額の把握、派生して納税義務に関するものであって、そもそも消費税がかかる・かからないの「課税の対象」についての判断には何も影響を与えないはずです。それなのに「消費税額」を記載していいのか、ダメなのかという議論はお門違いではないでしょうか?消費税の課税対象取引であれば、消費税の税率は決まっているのだから、請求に含まれる「消費税額」を記載したところで全く問題は無いというのが個人的な考えです。(ちょっと尖っています?笑)


ただし、実際のところ対事業者に対する請求書では、「消費税額」を記載しているが登録番号の記載がない場合には、問い合わせを受ける可能性が非常に高くなりますので、取引先との関係性を考慮したうえで対応を考える必要があるかと思います。

国税庁のQA頼みでは実務家の先生方に怒られてしまうかもしれませんが、この点インボイスQAなんかで明らかにしてくれると、多くの事業者さんは救われると思います。制度開始までに何らかのアナウンスがあることを期待しています。

別の話で、免税事業者が消費税額を記載した請求書を発行した場合「インボイス類似書類」に該当するという一部解説もあるようですが、インボイス登録番号を記載しなければ「インボイス」と誤認されることはまずないので問題ないと考えます。


■まとめ

インボイス制度が開始する令和5年10月以降、免税事業者が「消費税額」という記載を請求書に記載することについて“法律上”の問題はない。
ただし、対事業者向けビジネスでは対応が必要な場合も考えられる。

最後に、上記はあくまでも個人的な見解であって、弊法人の公式見解ではない点申し添えます。



横浜税理士法人
税理士・公認会計士 服部 彰男

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