韓国における誠実申告確認制度と日本の税理士法に規定される書面添付制度
12月になり寒さが体に堪える季節になりました。
そのような中、先月11月16日まだ日中気温30度近くある沖縄で、私の所属する中小企業会計学会の第12回研究発表会が行われ参加してきました。(以前は大学の講師をしていた時期もあり未だに学会のメンバーに実務家として加えて頂いております。)
今回の研究発表会は、業界の専門的なお話ですが、税理士法第1条「税理士の使命」(独立した公正な立場において,適正な納税義務の実現を図ること)を全うすることを目的とした書面添付制度この制度の学術的意義についての研究発表会でした。
いくつかの研究テーマの発表中で、私が興味をそそられたのが「韓国における誠実申告確認制度導入の背景と現状(税務士(韓国の税理士)の関与による納税義務の履行)」をテーマとした、三逸会計法人Samil PwCの原山道崇先生の研究発表でした。韓国の税制については、日頃から学会で大変お世話になっている甲南大学名誉教授河﨑 照行先生と共に10数年前インボイス制度の研究で訪韓し韓国税務士会の皆さんと税務上の手続きについて勉強した際にはこのような制度はなかったようで興味がありました。
原山先生によると
誠実申告確認制度とは、課税期間の収入金額が一定規模以上の事業者に対して税務士等が帳簿記帳内容の正確性を確認し、一定の手続きを得ることで特例を受けることができる制度をいい、この制度は個人事業者の誠実申告を奨励して課税標準を陽性化し、税務調査による行政力の無駄を防止しようとする制度とのこと。
そして誠実事業者として一定要件を備えた事業者は、医療費及び教育費税額控除、家賃税額控除、誠実申告確認費用等について税額控除等税務上の恩恵を受けることができるとして多くのインセンティブが与えられており、さらに驚いたことは税務代理を委任された税務代理人である税務士についても、税額控除のインセンティブを設けているとのこと。
日本でいえば税理士が税務申告をする際、書面添付を行なえば、納税者ではなく代理人たる税理士本人に一定の税額控除をすることに近いもので、この制度について韓国では税務代理人に対する税額控除は「誠実申告確認制度により税務署の処理効率は向上し徴税費用の減少につながるため、その減少分を納税者や税務士に還元するのは当然である。」とのことである意味うらやましい制度です。
対して日本の書面添付制度は,税理士が税理士法第1条「税理士の使命」(独立した公正な立場において,適正な納税義務の実現を図ること)を全うすることを目的とした制度で、その業務とは、(税理士が自ら作成した税務申告書作成に関して会計や税務上必要な計算・整理した事項等を記載した書面を税務申告書に添付する業務)であり、虚偽の記載等を行った場合には,「戒告・2年以内の税理士業務の停止・税理士業務の停止」(同法第46条)の懲戒処分といった厳しい罰則が課されることになります。
しかし添付したことで納税者や作成した税理士に金銭的なメリットはありませんが、税理士法によって独立性の堅持が求められる税理士に書面添付をしてもらうことで、納税申告書の信頼性を担保してもらい、課税庁からの信頼と間接的に金融機関などに対しても一定の保証価値の提供できる制度でもあり、韓国とは制度としては異なる点が数多くあるようです。
韓国(税務士)も日本(税理士)も共に納税者の信頼に応え申告納税制度を支える点では思いは同じですが、隣接する国との政治的・軍事的環境の影響や国民性の違いなのか、日本の税理士制度に対する税務当局の考え方とは制度が異なる点が非常に興味深く感じました。
最後に、大会当日台風が沖縄に近づき交通機関(飛行機)の乱れがあり心配しましたが無事2日間の大会を終え満足感一杯でした。特に沖縄で昼食べたソーキそば(あさひ食堂・最後は食い物かい!!)がとてもおいしく印象的でした。
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