独占禁止法と下請法は大丈夫?!インボイス制度施行後の継続取引における注意点。

いよいよ本年10月1日よりインボイス制度が施行されます。税務面での対応はもちろん大切ですが、取引先との取引条件についての対応も重要であると思います。「自社・自身が免税事業者である場合」と「自社・自身の取引先が免税事業者である場合」の継続的な取引における注意点について、独占禁止法や下請法の観点から再度確認してみましょう。

1、自社・自身が免税事業者である場合

【ケースⅠ】
免税事業者である自社A・自身Aは、適格請求書に該当しない請求書で元請先Bに総額11万円の報酬を請求した。その後元請先において、Aの請求書は適格請求書(インボイス)に該当しない=Aは免税事業者であることが判明したため、消費税相当額の支払いが拒否された。

⇒下請法違反の可能性があります。
発注者(買手)が下請事業者に対して、免税事業者であることを理由にして、消費税相当額の一部又は全部を支払わない行為は、下請法第4条第1項第3号で禁止されている「下請代金の減額」として問題になる可能性があります。


【ケースⅡ】
自社A・自身Aは免税事業者であることから、元請先Bと単価10万円で発注を行った。その後Aは登録事業者になったため、再度取引価格の交渉をお願いしたが一方的に従来通りの単価での据え置きがされてしまった。

⇒下請法違反の可能性があります。
下請事業者が課税事業者になったにもかかわらず、免税事業者であることを前提に行われた単価からの交渉に応じず、一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注する行為は、下請法第4条第1項第5号で禁止されている 「買いたたき」 として問題になるおそれがあります。


【ケースⅢ】
免税事業者である自社A・自身Aに、元請先Bから登録事業者になる様に要請があった。その際、「インボイス事業者にならなければ、消費税分はお支払いできません。承諾いただけなければ 今後のお取引は考えさせていただきます。」とった文言を用いての要請であった。また、要請に当たっての価格交渉等にも応じてもらえなかった 。

⇒独占禁止法上問題となる可能性があります。
課税事業者になるよう要請すること自体は独占禁止法上問題になりませんが、それにとどまらず、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる、それにも応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告することは、独占禁止法上問題となるおそれがあります。また、課税事業者となるに際し、価格交渉の場において明示的な協議なしに価格を据え置く場合も同様です。


2、自社・自身の取引先が免税事業者である場合

【ケースⅠ 取引対価の引下げ】
取引上優越した地位にある事業者(自社・自身)が、免税事業者との取引において、仕入税額控除できないことを理由に取引価格の引下げを要請し、再交渉において、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではありません。 しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、仕入側の事業者(自社・自身)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。


【ケースⅡ 取引の停止】
事業者がどの事業者と取引するかは基本的に自由ですが、取引上の地位が相手方に優越している事業者(自社・自身)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対して、一方的に、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しく低い取引価格を設定し、不当に不利益を与えることとなる場合であって、これに応じない相手方との取引を停止した場合には、独占禁止法上問題となるおそれがあります。


【ケースⅢ 登録事業者となるような慫慂等】
課税事業者(自社・自身)が、インボイスに対応するために、取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請すること自体は、独占禁止法上問題となるものではありませんが、それにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります。また、課税事業者となるに際し、例えば、消費税の適正な転嫁分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置く場合についても同様です。


※独占禁止法上問題となるのは、行為者の地位が相手方に優越していること、また、免税事業者が今後の取引に与える影響等を懸念して、行為者による要請等を受け入れざるを得ないことが前提となります。

インボイス制度開始後において、取引先と条件面でトラブルにならない様に、事前の交渉や打ち合わせが必要になるのではないでしょうか。
今からでも遅くはないと思いますのでしっかりと対応していきましょう。


参考URL

・免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html
・インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice/invoice_jirei.pdf


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