価格の表示(総額表示義務)について

 皆様方の中にレジでお金を支払う段階になって、商品の価格が消費税の税抜価格だったことに気づいて思っていたより多めに支払うことになった経験をされた方はいらっしゃいませんか?
 私の場合はカフェの価格表を見て1円単位まで財布から出して用意していたにもかかわらず、価格表が税抜価格だったため慌てて千円札で支払いを行い、財布が小銭でパンパンになった経験があります。

 このような事態にならないために、実は価格の表示については「消費税法」にて税込価格で表示することが義務付けられています。(このことを総額表示義務といいます。)
 具体的にはスーパーやコンビニ、WEBカタログなどで「不特定多数の消費者」が目にするような価格については税込価格で表示する必要がある、というものです。

 また、表示の方法については「景品表示法」にも規定があります。財務省の解説によると、例えば文字の大きさや色合いなどを変えることにより「税抜価格」をことさら強調する表示などで「税抜価格」を「税込価格」であると消費者が誤認するようなことがあれば、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」の問題が生ずるおそれがあるということです。

 ではこれを踏まえて以下の価格の表示はどうでしょうか?

9,800円(税込10,780円)

 皆様はどう感じますか? さすがにこの表示では誤認してしまいますよね。そのため財務省の具体例でも「明瞭に表示されているとはいえない例」となっています。

 では以下の価格の表示はいかがでしょうか?

9,800円(税込10,780円)

 こちらについては財務省の具体例では「明瞭に表示されている例」となっています。つまり、このように表示しておけばお店側にとっては価格の表示に関しては問題が無いということになります。

 そもそも「総額表示義務」は税込価格を一目で分かるようにするという消費者の利便性に配慮する観点から実施されたものです。そのため、よりこの趣旨に沿った表示をする場合には以下のような価格の表示になるのではないでしょうか?

10,780円(税抜9,800円)

 消費者の立場からすると上記の表示の方が分かりやすいのですが、企業側からは税込価格を前面に押し出すと価格を高いと感じ、購買意欲が下がり売上も下がってしまうという声があったようです。そのような企業の中には消費税率が5%から8%に上がった際には、それまで行っていた税込価格表示から本体価格+税という表示に変更した経緯がある企業もあり、税込価格の取扱いに苦慮している様子がうかがえます。こういった企業の声が届いたかどうかは定かではありませんが、税込価格が税抜価格よりもある程度小さい表示となっていても問題が無いというのが財務省の見解のようです。

 次に我々消費者が注意をしておきたい部分として、必ずしも税込価格で表示されない例外というものがありますので、こちらに触れたいと思います。

<例外 税込価格で表示しなくても良いもの>
①口頭で伝える価格
 口頭で伝えられた価格は税抜価格である可能性があります。

②個人宛ての見積書
個人宛ての見積書は「不特定多数の消費者」が目にするものではないため、税込価格を表示する義務がありません。
(発行者側としてはHPなどで消費者に向けて見積り例として記載する金額は税込価格で表示する義務があります。)

③希望小売価格
家電などのカタログで「希望小売価格」というものがありますが、この価格は消費者向けの価格ではなく、小売店に対する事業者向けの価格ですので税込表示の義務がありません。


 いずれにしても我々消費者としては無用なトラブルを避けるためにも、商品の購入やサービスを受ける場合には金額の部分も含めてしっかりと内容を確認してから支払いを行うようにしていきたいですね。



横浜税理士法人

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