証憑書類(領収書・請求書等)電子保存

 此のところ私の朝一の仕事は、前日使った領収書や交通費の精算書といった紙の証憑書類を電子保存するため、スマートフォンのカメラで読み込むことから始まる。Amazon等で電子取引に添付されたPDF請求データもPCから同様に直接読み込ませるだけで、簡単にTKCのクラウド・サーバに仕訳と紐付けることのできる証憑データを保存してくれこの作業が実に面白い。又必要があればAIが会計仕訳も組成してくれ、日付や取引先名等で過去の証憑データを検索して、一画面に仕訳と証憑データを同時に呼び出して表示することもでき大変使い勝手も良い。

 理屈上は昨年の電子帳簿保存法の改正で、一定の条件の下これらの紙の証憑書類の読み込みが終了した時点で廃棄することも可能だが、小心者の私は紙の証憑書類を依然として保存してしまっている。こんな輩がいるものだから、税理士法人であっても真の電子化については時間が掛かりそうだが、いずれ紙保存は無くなるのであろうことを身を持って体感している次第である。

 この電子保存に関連して、令和5年10月1日以降に消費税の処理に関して「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入される。これは、「インボイス発行事業者の登録番号」や「税率毎に区分した消費税額」等、必要記載事項を備えた適格請求書等 (インボイス)を、税務調査等で徴求されたら速やかに提示できるように保存しなければ、「消費税の課税仕入控除が認められない」という仕組みのことをいう。いわばインボイスとは金券と同じであり、正しく記載されたものを正しく保管していないと支払った消費税を預かった消費税から控除することが出来ないとして、課税事業者に相当の事務負荷と責任を負わせるものである。

 これを見越して、政府は紙の書類に代えて適格請求書等を電子的にやり取りする「電子インボイス」を認め、推奨し、インボイスの紙保存を将来的には考えていない。
 そして政府は、これまでの紙に印刷して郵送していた請求書等に代えて、データのまま共通EDI(電子データ交換)に電送する仕組みを考え導入する予定であり、すでに「Peppol(ペポル)」と称するグローバルな標準仕様を採用することも決定している。売り手も買い手もこの仕組みを利用すれば、手間をかけずに低コストでインボイスを電子保存できると考えられている。

 私見であるが、税理士会や商工会議所が反対している「事務手続きが煩雑となりとても手間のかかる複数税率やインボイス導入を廃止すべき」という考え方は全く持ってはおらず、企業側の事務負担減と税務調査の効率化のために、この電子インボイスの仕組みを導入し普及させることが前提のようだ。
 私自身、これを普及させていくことはとても良い事であり、必要なことであると思うが、これらも含めた会計に関する電子取引について、我々税理士法人はお客様が「証憑を法定要件どおり電子保存しているか否かは関知しない」という訳にはいかなくなる。証憑保存義務を会社の責任にして、税理士法人が関与しなければ(放置すれば)、今後、インボイス制度導入後に消費税の課税仕入控除を否認されるケースが多発する可能性があるのだ。
 経理処理から一歩踏み込んだ証憑の保存について積極的に関わり、TKCシステムを用いた法令に準拠した形での証憑保存や、ペーパーレス化による生産性の向上を指導できる税理士法人を目指していきたいと思う。



横浜税理士法人
代表社員 服部 久男

おすすめ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です