電子帳簿保存法 電子取引証憑保存に係る「宥恕規定」

 昨年の秋ごろから年末にかけて騒がれていました、電子帳簿保存法改正による電子取引証憑の電子保存義務化ですが、結果的には2年間宥恕されることとなりました。
 よって、令和5年末までは電子取引に係る取引情報について書面での保存が認められることになります。

 この電子取引の宥恕処置に係る改正省令が、昨年末の12月27日に公布されています(令和3年財務省令第25号)。また、その翌日28日には、国税庁より改正通達及びその解説(趣旨説明)、一問一答が公表されました。

 それらの通達等によると、今回の宥恕措置は以下の2点を満たす場合に認められるとされています。

  1. 保存要件を満たして電子データ保存ができなかったことにつき、税務署長がやむを得ない事情があると認めること
  2. 整然明瞭な状態で出力書面の提示等に応じられるようにしておくこと

 上記要件のうち「やむを得ない事情」の部分が気になるところですが、この宥恕措置の適用は広く認めることとされていますので、電子保存システム等や社内のワークフローの整備が間に合わないなどといった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、電子保存の準備を整えることが困難であれば、「やむを得ない事情」があると認められることが明らかにされています。

 なお、この宥恕規定の適用にあたって所轄税務署長への事前申請等の手続きは不要であることも明示されています。また、税務調査等の際に調査官から「やむを得ない事情」の確認等を受ける場合が想定されますが、対応状況や今後の対応見通し等ついて、具体的でなくてもよいので適宜知らせればよいものとされています。

 かなり宥恕規定適用のハードルは低いですね。多くの事業者はこの宥恕規定を使い、令和4年1月からの対応には着手しないと想定されます。

 大企業を中心にシステムの導入やワークフローの変更等、1月からの電子取引対応にかなり苦労されていましたが、開始直前でのどんでん返しでした。激怒する事業者、一安心した事業者、そもそも無関心だった事業者、色々なケースを見てきましたが、皆様はどうでしょうか?
 個人的には、一問一答が公表された去夏から、年末にかけての国税庁の対応がお粗末であった気がしてなりません。一問一答を公表する前に実務サイドの大きな混乱は予想できたのではないでしょうか。事業者や関連団体からの猛反発により急遽2年間の宥恕を決めたように思いますが、多額の投資を行い既に対応を始めている事業者が多くいる状況での手のひら返しは、多くの事業者を見ている我々からするとあまりやって欲しくないですね。
 既にシステム導入を行い、対応を始めている事業者については引き続き全力でサポートして行きたいと思います。

 最後に、2年間の宥恕を受けることは可能ですが、あくまでも宥恕です。2年後にはこの宥恕規定も切れますので、すべての事業者は電子取引の電子データ保存義務化に対応する必要があります。まだ2年もあると安心せずに、しかるべきタイミングでシステム導入やワークフローの変更に取り組み、万全の体制で臨めるよう、しっかりと準備を進めて行きたいですね。

横浜税理士法人 
税理士 服部彰男

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