【交際費】接待飲食代5,000円基準の注意点について
「接待飲食代は5,000円まで」と聞いたことはありませんか?
もちろん、必要性があるならば5,000円を超えて取引先等を接待することに何ら問題はありません。
一方、税務上は得意先接待で飲食等を行った場合、1人あたりの飲食代が5,000円以下である場合には、接待交際費から除外することができます。接待交際費には損金算入(税務上経費となる)できる金額に上限があることから、1人あたり5,000円を超えない接待飲食代を接待交際費から除外することができれば税制上有利となります。
ですが、インターネット上の情報や社内・同僚間でコミュニケーションにより、この『5,000円以下』という金額基準が独り歩きし、誤った解釈がなされ、税務調査等で指摘されるケースが散見されています。
この交際費の5,000円基準について正しく理解しましょう。
◆1人あたり5,000円以下の接待飲食代については交際費から除くことができます
飲食費のうち、その支払額が1人当たり5,000円以下のものについては、次の事項を記載した書類を保存することによって、交際等から除くことができます(措規21の18の4)。
② 参加した得意先等の氏名または名称・その関係
③ 参加者数
④ その飲食費の額ならびにその飲食店等の名称・所在地
⑤ その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
ここでいう「1人当たり5,000円以下」の判定は、支出した金額を単純に参加者数で除して行います。ただし、同業者同士で行う会費制の懇親会等、一参加者にはその懇親会の費用の総額が知らされず、その飲食に係る1人当たりの費用がおおむね5,000円程度に止まると想定される場合には、その負担額で判定してよいとされています(措通61の4(1)-23 )。
なお、判定にあたっての消費税等の取り扱いついては、その法人が税込経理又は税抜経理どちらの経理処理を行っているかで変わってきます。前者の場合には税込額で、後者の場合には税抜額で判定することになります。
◆接待飲食代5,000円以下の基準から「社内飲食費」は除かれています
飲食費のうち、社外の者が参加していない「社内飲食費」については、たとえ1人当たり 5,000 円以下であったとしても交際費から除くことは出来ません。(ただし、会議費・福利厚生費としてそもそも交際費等の範囲から除かれるものは対象外です)。
一部の従業員だけで開催された飲み会や、特定の役員と従業員だけの飲食等については、いわゆる「社内交際費」として扱われることになり、この場合5,000円以下基準の適用がありません。よって、一人当たり5,000円以下に収めたとしても、税務上は交際費として取り扱われることになります。
だからと言って社外の者が参加していたと虚偽の記録を残すことは絶対にやってはいけません。「仮装・隠蔽」行為として重加算税対象になる可能性が高くなります。形式的に得意先等の従業員を参加させていると認められる場合や、飲み会の席に挨拶に来ただけの得意先等の従業員を参加者として含めている場合等も同様です。
なお、「社外の者」の判定について、外部の者が1名でも参加している場合には「社外」として判断されます。また、親会社やグループ内他社の役員・従業員、同業者同士等の会費制の自社負担分についても「社外」として扱われます。
◆会議費はそもそも交際費ではありませんので、5,000円以下基準は適用されません
交際費に該当しないこととされている会議費等(会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用など)については、たとえ1人当たり 5,000 円超のものであっても、その費用が通常要する費用として認められるものである限りにおいて、交際費等に該当しません。
会議中の昼食時間に提供されるお弁当が5,000円超であったとしても、会議に関連した費用であると判断できる場合には、交際費ではなく会議費として処理することになりますので、5,000円以下基準の適用なしに交際費から除くことが可能です。
これは、あくまでもその飲食等の実態が「会議に関連しているか」という点が重要ですので、個々のケースごとに実態に照らして判断が必要になります。
◆1回の飲食代の領収書を分割して判断することは出来ません
1人当たりの金額が5,000円ぴったりの領収書を見たことがありませんか?確かに飲み放題付で5,000円(税抜)のコースを注文すれば、もちろん問題ないと思います。ですが、私が学生時代にアルバイトしていた際、4名で来られて3万円程飲食されたお客様から「領収書を20,000円とそれ以外に分けてもらえる?」と言われたことがあります。当時は知識もなかったもので言われるがままに、、、といった感じでしたが。(※ここでは消費税等の細かい話はさておき)
税務上、「一の飲食等の行為を分割」して記載することは「仮装・隠蔽」にあたるとされています。この手法で入手した1人当たり5,000円以下の部分の領収書を精算し、5,000円以下飲食費として交際費から除外した場合には「仮装・隠蔽」と判断され重加算税が課されるリスクがあります。
残念ながら、今現在も多くの企業で領収書の分割が行われると考えられます。5,000円以下飲食代の判断を誤ると影響も大きくなりますので、他部署も含めて注意が必要です。
以上、接待飲食代の5,000円基準の注意点について記載させて頂きました。
言い方が悪く、不快感を与えてしまったら申し訳ありませんが、取引先に対して接待を行う部門の方々は、会社の経費精算基準に従い、確実に精算ができるように色々な手を考えるはずです。実際に「参加人数の水増し」「参加者の偽り」「領収書の分割」を行ったことによる税務調査の否認事例を数多く見てきました。そしてそのほとんどが重加算税対象になっているのも事実です。
今一度、社内の交際費支出については見直しを行い、正しい判断が出来るような体制を整えたいですね。
また、交際費には会議費、福利厚生費、給与課税等も絡んできます。これはまたの機会にでも。。。。
税理士・公認会計士 服部彰男
■国税庁「H18.5 交際費等(飲食費)に関するQ&A」より一部引用
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